通庭が楽しい家
二〇一四年 所沢市
人と緑が集う街
私達は八年間、都心のマンションで暮らしていました。
駅から近く、おいしい店も多くありましたが、
居住者トラブル、騒音、殺風景な眺めに身も心も疲れ果て、
自然豊かで静かな戸建住宅に暮らしたいと
強く願うようになりました。
それから一年以上をかけ、百件以上の土地に足を運び、
資産計画を何度も練り直し、
ソーラータウン西所沢に辿り着きました。
この街には、八国山を引き込むよう植えられた木々、
子供達の遊び場となっている坂道と駐車場、
蔵のような外観で揃えられた二十二軒の家があります。
夕方、丘の上に立つと、
夕陽に染まる八国山を借景にした美しい街並みに、
駆け回る子供達と井戸端会議をする大人達の姿があり、
お寺の鐘が聞こえてきます。
そして街では毎年数回のイベントが行われ、
道や駐車場にテント・ テーブル・ 椅子を並べ、
住宅地では珍しくバーベキューや流し素麺をやり、
家族分け隔てなく、子供大人が一緒に楽しんでいます。
「向こう三軒両隣り」というご近所付合いが、
今もここには残っています。
人と緑が交わる通庭
設計に取り掛かった私たちは、この街の暮らしにどんな住まいが合うのか考え、かつて民家にあった通庭(とおりにわ)を思い出しました。通庭は大きな土間です。ここはかつて、人が集う開かれた場であり、農作業や食事を作る暮らしの中心でした。この街の一角にそんな通庭があったら、近所の方とごはんを一緒に作ったり食べたりできて楽しいだろうな・・・そんな暮らしを思い描きました。
自然とのつながり
そんな通庭では、春にお花見、冬は薪ストーブを楽しみます。さらに通庭は北庭や南庭など屋外にも続きます。北庭では、薪棚で周囲と緩やかに仕切りつつ、ベンチを設けて井戸端会議ができます。南庭では、机と椅子を並べてランチをします。他にも、空庭(アウトドアバルコニー)では花火大会鑑賞、坪庭のある浴室では鈴虫の音を聞きながら湯に浸り、濡れ縁では夕涼みやお月見を楽しみます。
そして毎冬、ご近所さんと薪ストーブを楽しみながら牡蠣を味わうイベント行っています。薪ストーブで出た灰は肥料として、ご近所さんにお裾分けしています。お陰様で「向こう三軒両隣り」だけでなく「全二十二軒」のご近所さん、そして自然とのお付き合いを楽しんで暮らしています。
2014年竣工 埼玉県所沢市山口 敷地140m²(42坪) 延床93m²(28坪) | |
掲載記事 KLASIC「つくるのは、住まいではなく暮らし 今見直される、これからの暮らしのカタチ」 |