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四、庭屋一如、環境共生

庭屋一如の意味、語源 由来、読み方

庭屋一如(ていおくいちにょ)
という言葉はご存じですか?
庭屋一如とは
「庭と建物は一つの如し」
という意味です。
庭と建物が融合し
自然と調和する境地、
庭と建物の調和が
とれた生活空間、
引いては環境と共生する
建物を指します。
古くから日本の住まいには
庭園や坪庭があり、
「自然と人は分かち難く、
つながっている」
という日本人の心情が
あらわれています。

庭屋一如の意味、語源 由来、読み方

庭屋一如(ていおくいちにょ)
という言葉はご存じですか?
庭屋一如とは
「庭と建物は一つの如し」
という意味です。
庭と建物が融合し
自然と調和する境地、
庭と建物の調和が
とれた生活空間、
引いては環境と共生する
建物を指します。
古くから日本の住まいには
庭園や坪庭があり、
「自然と人は分かち難く、
つながっている」
という日本人の心情が
あらわれています。

ウチはソト
ソトはウチ

〇京都迎賓館も庭屋一如
庭屋一如という言葉、実は茶室・数寄屋建築研究家・中村昌生先生(1927~2018)が提唱した造語です。
中村昌生先生は、古建築の保存修復にも尽力されたほか、京都迎賓館(2005年4月開館)など和の迎賓施設や茶室の造営・設計も多数あります。
また桂離宮整備懇談会委員なども歴任しております。
私は桂離宮(一番上の写真)が大好きです。どこまでが庭でどこまでが建築なのか分からなくなるような不思議な世界に魅了され、2日間通いました。

〇庭屋一如を小さな土地でもかなえる
私たち夫婦は、結婚を機に都心のマンションで八年間暮らしていました。
窓は大きく、光がたくさん入り、風も通り抜けますが、目の前の通りを行き交う人の目線が気になり、見上げれば電線だらけ、向かいのアパートの廊下ではご近所さんが煙草の煙をこちらに向かって吐いています。すぐ横に止まる車が何十分もアイドリングし、夜も眠れないこともありました。
気付けば、窓を閉め切り、ブラインドを24時間下ろし、暗く窮屈に暮らしていました。
「窓を開け放ち、光や風を感じながら、伸び伸びと暮らしたい!」
そんな願いを叶えるため、私たちは郊外の小さな土地で自宅を設計しました。
その設計の原点は、あの桂離宮で体感した「庭屋一如」です。
建物を設計するだけでなく、周辺環境との共生を図りながら庭を含めた敷地全体を設計しました。

植物や景石など造園は、造園家の小林賢二さんなどに依頼しています。
小林賢二さんはわざわざ山に登って木々を採り、採石場に行って石を集め、生花のように木々や石の個性を生かしてその土地にそっと落とし込んでくれ、雑木林の風情を感じる庭を設えてくれます。

〇庭屋一如とは ウチはソト、ソトはウチになる
庭を設えるだけでは十分ではありません。
日本の住まいには昔から、下屋、縁側、濡れ縁、通庭、土庇(どびさし)といった、「ウチ(屋内)」なのか「ソト(屋外)」なのか曖昧な空間がたくさんありました。
現代ではアウトドアリビングも注目されています。
私たちは、このように建物と庭との境界を隔てず、ウチとソトが混ざりあう曖昧な空間に日本的な良さ、魅力を感じています。

小さなウチでも広がりと開放感を得られ、ソトの四季の移ろいを肌で感じる暮らし・・・

私たちは、ウチはソトのように、ソトはウチのように設計することを心がけています。

敷地の
ウチもソトも

〇庭屋一如とは 敷地のウチもソトも配慮する
設計を始める前に、私たちは建物の建つ敷地に時刻を変えて何度も足を運びます。
そして敷地の内側だけでなく、敷地の外側も含め土地の声に耳を傾けます。
五感を使い、景色、緑、風、香、光など、その土地の恵みを掘り起こし、その恵みを庭と住まいで享受します
例えば、食堂から見えるお隣さんの物置は低い塀で隠しつつ、お隣さんの桜や梅は借景として、楽しませてもらっています。

また土地の恵みだけでなく、災いにも目を向けます。
地震をはじめ災害のリスクはもちろん、騒音、人や車の往来、周りからの視線、周りの建物からの日影といった負荷への低減策を検討します。
さらに、街並みとの調和した外観、庭の景色はご近所にもお裾分けする等、住む人と周りの人との結びつきも大切にします。
例えば、道路に面する庭では道路際に板塀を設けますが、街に対して「閉じすぎず開きすぎない」よう、車や目線が遮る程度の高さに抑えます。

〇庭屋一如とは 窓の設え方ひとつで大きく変わる
周囲の環境や庭のあるソトをウチから望むとき、窓の設え方で印象が大きく変わります。
日本の多様な気候に合わせ、窓辺には昔から、網戸、雨戸、格子戸、連子窓(れんじまど)、無双窓(むそうまど)、障子、よしず戸、簾など、種類が豊富です。
どのような窓を選び、組み合わせ、その大きさや位置をどうするか、とても重要なので私たちは時間をかけて検討します。

そこで私たちはプロジェクト毎に建築模型を制作し、模型の縮尺を一般の設計事務所の約3倍まで拡大、さらに敷地周辺にある建物を含めた範囲まで拡張しています。1ヶ月以上の時間がかかり、新聞見開き以上の大きさになりますが、わざわざそこまでするのはなぜでしょうか?

自然の恵み(光、風、景色など)を享受できる空間はどこか?
災い(雨、暑さ寒さ、騒音、目線など)を遮る方法は何か?
窓を通してソトから訪れる災いを遮りつつ恵みをいただき、いかにウチを心地よくするか?
四季を通してウチとソトがいかに調和できるか?

模型の窓を1つ1つ覗き込み、窓の種類、設ける位置、大きさなど緻密に、お客さまと一緒に検証するためです。

〇庭屋一如とは「自然と人は分かち難くつながっており、人は自然と人に生かされている」
私たちが庭屋一如を原点として設計した自宅は、9年目を迎えます。
春、借景にしているお隣さんの桜で花見、
夏、空庭(アウトドアリビング)では打上花火を眺め、
秋、坪庭のある浴室では鈴虫の音を聞きながら湯に浸り、濡れ縁でお月見、
冬、ご近所さんと一緒に、薪ストーブで焼いた料理を味わう
そんな暮らしを楽しんでいます

私たち市中山居が追い求めるのは、
「自然と人は分かち難くつながっており、人は自然と人に生かされている」
そんなことを日々感じられる、暮らしの器です。