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あてなよるに登場する大原千鶴の京都のアトリエ そこから学ぶ住まいづくりとは?

(家庭画報 August2016より)

京都御所南は、京都御苑から堀川通までの地域で、築100年以上の町家が多く残っています。

大原千鶴(おおはらちづる)さんは、木島徹さんを設計に迎え、この地域にある自宅の近くにアトリエを開きました。

この大原千鶴さんのアトリエはNHKの番組「あてなよる」でも紹介されており、食材を使った料理を楽しむ様子が放映されました。
このアトリエのキッチンはスタジオ・キッチンとしても使用され、多くの工夫が凝らされているます。

この記事では大原千鶴さんの京都のアトリエの工夫について設計士の目線からお伝えしていきます。

目 次

大原千鶴 のアトリエ「遇酒旦呵呵」

大原千鶴 さんは料理研究家としてテレビ、雑誌、講演、料理教室などでご活躍されています。京都の奥懐・花脊で 120年あまりの時を刻む「野草一味庵 美山荘」(https://miyamasou.jp/)に生まれ、山里の自然に囲まれて育ち、小学生の頃から賄い料理を任されていたそうです。
そんな大原千鶴 さんの小さなころからの経験が、大人になってアトリエに生かされていると感じました。

アトリエ「遇酒旦呵呵(ぐうしゅしゃかか)」の意味
中国五代十国時代の漢詩の一節『花間集』から引用されたそうです。
「酒に遇(あ)ひては 且(しば)し呵呵たれ」
酒を飲んだらひとしきり大笑いしよう、という主旨です。
https://blog.goo.ne.jp/eric_henderson/e/3431d3b31cb56884d84e6be9fd1b2a36

大原千鶴 のアトリエは京都御所南にある町家を改修

京都御所南
このエリアは、北は京都御苑(御所)のある丸太町通、南は三条通辺、東は鴨川、西は堀川通で囲まれた地域を指します。築100年以上の町家が多いそうです。
アトリエは、大原千鶴さんの自宅のすぐそばにあり、街中で食材集めも便利、路地のある町家に一目ぼれして「パン屋さんでパンを買う時より迷いなく購入を即決」したそうです。

大原千鶴 のアトリエ設計は、建築家 木島徹さん(京都)

この町家を改修する建築家を探していた大原千鶴さん。お友達のお店をとても気に入り、設計者を尋ねたら、かねてから作品に憧れていた木島徹さんだったとのことです。

木島徹さんは大手ゼネコン設計勤務後、材木商での修行を経て、2003年木島徹設計事務所を京都に設立。和素材を用いたモダンな空間づくりに定評があり、和食店、バー、ショップ、個人邸の改修改築など多数手がけています。
http://www.kijima102.com/

大原千鶴 のアトリエは「あてなよる」でも登場

「あてなよる」はNHKの番組

「酒の肴(さかな)のことを日本人は愛情を込め「あて」と呼ぶ。酒にあてがうもの、酒の味を引き立ててくれる伴奏者。極上の「あて」と酒でたのしむ大人のエンターテインメント」番組です。

番組公式サイトより

「あてなよる」では、作ること、食べること、呑むことを楽しむ
大原千鶴さんとソムリエの若林英司さんがゲストを迎え、「食パンで呑む」、「貝で呑む」、「ネギで呑む」、「木の実で呑む」など、身近な食材を「あて」として作りながら、食べて、呑みます。楽しそうに作りながら、どんなお酒が合うのか?とおいしそうに食べて呑む様子は、つばを飲み込みんで見入ってしまいます。
その番組の舞台が、大原千鶴 さんのアトリエ「遇酒旦呵呵」だったんです。

実は、市中山居のお客さまから「”あてなよる”みたいなキッチン」をご要望いただき、この番組と大原千鶴さんのアトリエを知り、感銘を受け、勉強しました。

大原千鶴のアトリエのキッチンから学ぶ工夫とは

大原千鶴さんのアトリエは、TVの収録にも対応したスタジオ・キッチンです。「自分の住まいには贅沢だな」と思われる方もいらっしゃると思います。ですが、その裏にある考え方、重ねられた数々の工夫は、大いに参考となると思います。

大原千鶴のキッチン、料理を楽しむ工夫

工夫1 作りながら食べる
メニューはシンプルなものを予め下ごしらえしておくことで、お客さまと一緒にお酒を飲みながら作れるようにしています。

工夫2 私好みの空間に
大原千鶴さんは、自然の恵み、生命をいただくありがたさを感じることで料理する意欲を高めるそうです。自分の好みの空間を目指し「京都と北欧のミックス」をテーマとして、京町家の持ち味を生かしつつもシンプルモダンな隠れ家をイメージしました。木(床柱や名栗彫りの手摺)、漆喰壁、和紙の障子等の自然素材を生かした和の空間を設え、北欧のヴィンテージ家具を合わせています。

工夫3 私が素直になる、心地よさ
改修の際、元の町家では部屋として埋もれていた中庭を復活させました。「小さな庭に差し込む自然の光、緑が風にそよそよと揺れて、植物の成長や、羽休めにやってきてくれる小鳥の姿に目がいくと、眉間の シワもふわっとゆるんで、心がやわらぐ」そうです。


『茶呑みめし むりなく、むだなく、きげんよく食と暮らしの88話』文藝春秋

工夫4 動線、使い勝手に気を配り、機嫌よく
キッチンでの料理の仕方は人それぞれなので、動線は自分の体に教わったそうです。
食器の量と使用頻度、家電、献立の傾向、主食はパンか御飯か、お弁当づくり、お菓子づくり、ゴミ箱の容量など、様々に気を配り、何度も動線をシミュレーションしてレイアウトを決めたそうです。

工夫5 清潔に
「キッチンは生命が息づく場所。その空気をよどませず、 いい料理を作りやすくするために清潔に保つ」そうです。
ゴミ受けやキッチンペーパーの使いやすい位置を考えたり、コンロの縁にはマスキングテープを貼り、汚れたら貼り変える工夫など、日々の心配り、お手入れが大切です。

大原千鶴のキッチン、もてなす工夫

工夫6 目線を近づける
一般の家庭では、キッチンで料理をする人とダイニングテーブルに座る人の目線には高低差があります。ここではお客さんとの目線が合うよう、キッチンの床をダイニングテーブルの床より15㎝下げてます。

『茶呑みめし むりなく、むだなく、きげんよく食と暮らしの88話』文藝春秋

工夫7 整える
実は大原千鶴さんのアトリエには、キッチンの裏(障子裏)にバックヤードとしてもう1つキッチンがあります。表のキッチンがとてもスッキリしているのは、冷蔵庫や収納をバックヤードに置いているから。ダブルキッチンは住まいでは贅沢なので、1つのキッチンの中でも「いつもキレイ」なキッチンカウンターと「散らかり自由」の納戸を設け、使い分けることも一案です。お客さまの目の前で料理し、作りたてをおもてなしできます。

通庭が楽しい家

工夫8 窓の高さ
街中の家が寄せ集まった町家なので、ご近所の洗濯機や室外機が目に入ります。お客さまがダイニングテーブルに座り、中庭を眺めたときに生活感がみえないよう、窓を低めに抑えています。「癒されますね」と度々いってくださるそうです。

通庭が楽しい家

 

大原千鶴さんのアトリエ「自分らしく無理せず、命を無駄なく使い、毎日を機嫌よく」

大原千鶴さんのアトリエのキッチンは
「自分らしく無理せず、命を無駄なく使い、毎日を機嫌よく」暮らすため、多くの工夫を重ねて形にしたものです。

その考えは、住まいのキッチンにおいても通ずるものがあり、ひいては住まいづくりにおいて大切なものではないでしょうか。

あなたはキッチンで、住まいで、どんな暮らしを送りたいですか?

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